60過ぎの勤務医が田舎町にセカンドハウスを建てる。(3) 農地法第5条、廃棄物処理法第16条など

農地法第5条
農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(中略)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(中略)を受けなければならない。

農地は原則的に購入できない。農地を農地として買う場合であっても、経験のある農家でなければ買うことはできない。この農地法のことを最初から知っていれば、以下に書くことは最初から予測できていた。「農地に家を建てることはできるか?」で検索すると複数のサイトがヒットするが、それを総合すると以下のような流れが想像できる。まずは調べておくべきであった。

話を元に戻す。農家でない人は農地を買うことはできない。ここでこの契約が白紙に戻されるのかと覚悟した。ところが、農地を購入する場合、500平方メートルまでなら、農地に付属する宅地として農地の転用が認められるという抜け道(としか言いようがない)があるということで、その手続きに入るという。畑に行くための6メートル幅の通路を残して、道路に面した土地500平方メートル弱(150坪)の土地を分筆する。そして、その値段を再度決めなおして(とんでもなく割高な土地になってしまったが)、再契約をすることになった。

このあと、農地から宅地への転用の手続きが開始されることになる。土地の分筆とその登記、隣家の承諾書の取得、農業委員会へ提出する書類の作成と提出などがあり、農業委員会で認められたあとに、最終的な売買成立になる。これが、遅々として進まず、半年以上待たされた。建築資材の値段が高騰してきているなかで建築業者も早く工事を開始したいし、妻もせっつくし、毎月不動産会社に進捗状況の確認の電話をするという今までにない経験をした。

普通の土地の売買よりもかなり大変な手続きであることは事実だが、隣家の承諾書の取得に1か月以上かかっているし、時間がかかった一番の原因は不動産会社と行政書士のトラブルとのことだった。しかし、それは、こちらのあずかり知らぬことだ。そして、最後には3日後の農業委員会に提出するためとのことで貯金通帳の残高のページのコピーまで提出させられた。(あとから建築業者に聞くと、全国展開するこの不動産業者さんは他の不動産業者が手を出さないような微妙な土地の売買を多く扱い、対応も少し怪しいのだということだった。まあ、この業者さんがいなければ、始まらなかった話だし、よしとすべきかもしれない。)

まだ、続く。時間がかかったので、最終的な売買が完了する前に地盤調査を開始していいよってことになった。ここからまた一波乱(最後の一波乱であってほしい)。こちらの建築業者が地盤調査をすると、地中になにか「ガラ」がいっぱい埋まっているらしい。これではその上に建物が立てられないとのことだ。そして、掘り起こしてみると白線の入ったアスファルト片等が出てきた。明らかに産業廃棄物である。こちらとしてはアスファルト片が埋まっていようがきちんとした家が建てられれば良いが、これで余計な費用が掛かるのは勘弁してほしい。今度はしっかりとネットで学習してから対策を立ててから臨むことにした。

農地に廃棄物を埋めるのは、上の農地法のほか廃棄物処理法にも違反する。そのような行為を行ったものは、それを撤去しなければならない。この時点で農地の転用は認められており、農地法は適用されないかもしれないが、明らかに違法投棄である。土地は20~30年前に売主さんが誰かから譲渡されたもののようで、売主さんは知らなかったようだが、責任は売主さんにある。そこで、まず、このことに係る余計な費用を払うつもりはない、場合によっては土地売買は不成立になると建築業者と不動産業者に対して宣言し、対処してもらうことにした(こういうところにセカンドハウスの気軽さが出る。本チャンの自宅建設だったらこうはならないか?)。彼らと何度も連絡を取って、最終的に、埋まっているものをすべて撤去するのではなく、建物を建てるときにかかる余計な費用を売主さんに負担していただくことで話がついた。1年以上かかって、予定から半年以上が経過してから、土地の売買が完了した。

しかし、あとから考えれば、一年以内とか、建築計画とかは、農地転用のプロセスで求められる条件だったのだ。業者は最初から知っていたとしか思えない。何だったのだろう、この1年以上の苦労・苦痛は。ただの土地売買のはなしなのに。