対話型AIは診療に使える?(2)

対話型AIは診断において非常に重要である。そして資金のない田舎の小規模病院の質を大きく改善する可能性がある。

対話型AIは医療AIである。と言ってしまう。

医療AIで進んでいるのは画像診断の分野だろう。多くの画像を機械学習して診断の精度を上げる。使ったことはないが、話題としてネット上でよく見る。

次にネット上でみるのが問診システム。患者さんの訴えを入力していって、疾患の可能性をコンピュータに示してもらおうという試みだ。いくつかすでに市販されているが、導入費用・維持費用が高くて手が出ない。コロナが流行り始めてしばらくして 対面/接触しないでこのAI問診だけでコロナを診断しようという試みがいくつもあったが、うまくいったのだろうか?現場の感覚としては、ウイルスの型が変わるたびに症状の表れ方が少しずつ変化するCOVID-19に対して問診システムがうまく機能するようには思えない。それよりはCOVIDの感染様式を十分理解して必要な感染対策を行った者が おおざっぱに症状を聞いたうえでPCRなり抗原検査なりの検体をとってしまったほうが安全で簡単である。

コロナ以外の疾患においても慣れた者が問診をしてしまった方がたぶん早い。今の問診システムが外来看護師の予診の省力化をうたっているのもそのへんの限界があるからだろう。しかし、「医者の問診技術を習得した音声認識/対話型AI」になってくればはなしは別だ。すべての必要な情報を患者さんから聞き出し、鑑別診断から検査スケジュール・治療方針まで一気にコンピュータがやってくれてしまうことになる。ここまで来ると医者はいらなくなる。一部の患者さんは自分で高度の判断ができるようになってしまうかもしれない。

今の問診システムには「医者の問診技術を習得した」「音声認識」という部分が足りていないと思う(最新の問診システムを知らないで言っているので間違っていたらごめんなさい。どちらにしても高価なので試すこともできないし)。そして一方の対話型AIはすでに動き始めている。そしてなによりもこれが無料で利用できるという点が大きい。

いずれにせよ対話型AIは問診システムの重要なパーツになる。

コロナ禍の文脈で故宇沢弘文氏の『社会的共通資本』の理論が取り上げられるのをときどき見かけた。そのなかで医療は環境・社会インフラ・教育などと同様に社会的共通資本であるとされている。この考え方が好きだ。そのような気概をもっていなかの小規模病院でコロナ診療を行った。それなのに いなかの小規模病院は資金力がなくDXからどんどん取り残されていく。問診システムは各科医師が揃っている大きな総合病院よりも数人の医者でまわしている田舎の小規模病院の方に必要なシステムだ。一方でいなかの小規模病院にはそれを導入する資金力がない。医療AIシステムを作って販売する企業にお金儲けをするなとは言わないが、国は社会的共通資本であるいなかの小規模病院に責任をもってそれらを配るべきだ。

そしてもう一つの大きな懸念。対話型AIも『社会的共通資本』の一部である。いま存在してしまっている対話型AIを囲い込んで有料にしたりしないでほしい。また、これから対話型AIを使った不適切な事例とか犯罪とか出てくると思うが、規制したりしないでほしい。対話型AIは診断において非常に重要である。そして資金のない田舎の小規模病院の質を大きく改善する可能性がある。